アイドルへの誹謗中傷をやめたい|地下アイドル界隈カルチャーアップデートの提案【現場・特典会・SNS】
ここ数年、地下アイドル界隈では「誹謗中傷」が、はっきりとした問題として浮かび上がっています。
ライブ中のヤジ、特典会での一言、SNSでの晒しや悪口、そして表には見えないDMでの批判――。
現場に通っている人なら、一度は胸がざわつくような場面を見たことがあるかもしれません。
AGSではトレンド特集として、ある運営の「お願い」文をきっかけに、応援とハラスメントの境目について考えました。
👉 🗞トレンド特集|アイドルへの誹謗中傷はどこまで許されていると思ってる?【現場・SNS 2025】
この記事では、より長く読み返せる定番ガイドとして、アイドルへの誹謗中傷とグレーゾーンの言葉について、界隈全体のカルチャーをアップデートする視点から整理します。
攻撃するためではなく、推しと自分、そして現場を守るために。一緒に考えていきましょう。
※本記事は一般的な情報と考え方の整理です。個別ケースの法律判断ではありません。具体的なトラブルや被害がある場合は、警察・弁護士など専門機関へ。
1.今、現場とSNSで実際に起きていること
まずは、2025年の地下アイドル界隈で実際に起きている“場面”から出発します。ここでは、あえて具体ワードはぼかして書きます。
- ライブ中のヤジ・罵声
MC中に強い言葉で突っ込む/歌唱中に「下手」など嘲笑まじりの声を飛ばす。
→ パフォーマンス最中の否定は集中を削り、自己否定を加速させます。 - 特典会でのダメ出し・説教
「最近やる気ないよね?」「もっとSNS頑張らないとダメ」など、“面談”のように詰める。
→ 仕事評価・人事面談に近く、心身を大きく削ります。 - SNSでの晒し・評価ごっこ
スクショ付きで対応を点数化/「今日の〇〇は終わってた」など断定口調で拡散。 - 表に見えないDMでの批判・詰め
挑戦(衣装・企画・投稿)直後の「そんなの見たくない」「イメージが崩れた」等の否定メッセージ連打。
やっている側は身内ノリや“本音”のつもりでも、受け手にとっては「人目のない場所で責められる行為」です。表で晒されるのとは別の仕方で、深い傷として残ります。さらに侮辱や悪質な中傷には、公的な相談窓口や法的な対応も整ってきました。
「ただの悪口」「ノリだから」では済まない前提に立つ必要があります。
2.どこからが誹謗中傷なのか――線引きの整理
「厳しめの感想」と「誹謗中傷」の境目は分かりづらいもの。特に注意したいラインを3つに分けます。
2-1.人格・容姿への攻撃
- 「〇〇は人として終わってる」などの人格否定
- 身体的特徴をあげつらうあだ名・蔑称
これは活動への意見ではなく、その人の存在を傷つける言葉です。
2-2.憶測を事実のように語る行為
- 「絶対裏で〇〇してる」「運営とグルに決まってる」などの断定
- 切り取ったスクショだけで、背景を無視した“物語”を作る
事実確認なく悪いイメージを広げると、名誉・信用の侵害になり得ます。
2-3.晒し・吊し上げ/ランキングごっこ・DMでの詰め
- スクショや名前付きでメンバーやファンを晒す
- 「この子は終わってる」等のラベリング
- タイムラインでは触れず、DMでだけ長文の否定を送り続ける
公開の場でもDMでも、相手を追い詰める目的の言葉は、もはやただの「感想」ではありません。
3.「意見・批評」と「攻撃」はどう違う?
全部褒めろってこと?」「感想も言っちゃダメなの?」という声もあると思います。ここで大事なのは、「何を」「どこに」「どういう言い方で」書くのかを分けて考えることです。
- 作品・パフォーマンスへの感想:自分の感じ方として語る。
例)「今日のセトリは自分には刺さらなかった」「この演出は好みが分かれそう」 - 人への評価・レッテル貼り:本人の価値そのものを断定する。
例)「この子は価値がない」「あの箱は終わってる」
前者は「自分の感想」。後者は「相手の価値を決めつける言葉」。
「このパフォーマンスは自分には合わなかった」と「この人はいらない」は、まったく別です。
4.アイドル側から見た「一番つらい言葉」
- 「やる気ない」「手を抜いてる」など内面の決めつけ
体調やコンディションの波を「やる気」で短絡させると自己否定が加速。 - 推しの前で他のファンを下げる言葉
「◯◯より自分の方が通ってる」等は、現場の分断として映りやすい。 - 勇気を出した一歩(衣装・企画・投稿)をまとめて否定
「そんなの見たくない」「イメージが崩れた」。 - DMだけで責め続ける言葉
公開の場で触れず、長文否定だけが届き続ける孤立感。
逆に、支えになる言葉はシンプル。
「今日のここが本当に良かった」「この曲で救われた」「また会いに行きたいと思った」。
評価やダメ出しではなく、具体的な“好き”を伝えることが、明日を支える最短距離。
5.なぜ誹謗中傷に流れてしまうのか――ファン側の心理
- 正義感:「このままじゃダメ」と“指導する側”に自分を置いてしまう。
- 承認欲求:辛辣なコメントがバズる自分に価値を感じてしまう。
- 優位性への執着:「こんなに通ってる自分は言う権利がある」と感じてしまう。
DM長文批判もこの延長です。「直接言ってあげる自分」に酔うほど、相手の状態や立場が見えなくなります。
推し活は、推しから力をもらい、自分の生活を少し良くするためのもの。推しにストレスをぶつける場でも、誰かを見下して自分を保つ場所ではありません。
6.オタクができる「守る行動」リスト
6-1.言葉の選び方を少し変える
- 誰かを上げるために、誰かを下げない
- 「嫌い」「無理」より、「自分には合わなかった」で止める
- 公開ポスト前に「本人が読んだら?」を一度想像する
- DMは“逃げ場のない場所”だと意識して強い言葉にしない
6-2.困っている子を見たときの動き方
- 度を越えたヤジや嫌がらせは主催・スタッフへ共有
- 被害にあっている人へ、無理のない範囲で「大丈夫?」と声かけ
- その場で動けなくても、後で公式窓口へ状況共有
6-3.公的な相談先を知っておく
ネット上の誹謗中傷や違法・有害情報には、警察のサイバー相談や公的通報窓口があります。
被害者でも、推しや他のファンでも、ひとりで抱え込まないことが第一歩です。
- 法務省 人権擁護局(インターネット上の人権問題):https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04.html
- 違法・有害情報相談センター:https://www.ihaho.jp/
- インターネット・ホットラインセンター:https://www.internethotline.jp/
※リンク先は各公式の最新情報をご確認ください。緊急・切迫時は110番や各都道府県警、弁護士等へ。
7.まとめ――推しもオタクも人間。同じ側に立って現場を守ろう
誹謗中傷のニュースや運営の悲鳴を見るたびに、同じ問いが浮かびます。
「なんのためにオタクをやっているんだろう?」
推し活はもっとシンプルで、もっと優しいはず。
好きな子の頑張りに元気をもらい、その明日が少しでも軽くなるように応援する。
そのために私たちは現場に通い、時間やお金や感情を使っています。
- 「応援」の名前で誰かを傷つけない
- 批評は作品へ。人そのものを否定しない
- 推しの自由と安全を奪わない距離感を、各自が選び直す
推しもオタクも人間。どちらかだけが我慢し続ける関係は長くはもちません。
だからこそ2025年の今を、「推しもオタクも長く健康でいられるカルチャー」へ更新するタイミングだと捉えたい。
「もしかしたら、自分も誰かを傷つけていたかもしれない」。
そう感じても、ここから言葉を変えれば十分な出発点です。
今日から選び直す言葉が、推しの明日を守り、現場の空気を少しずつ変えていきますように。
AGSはこれからも、「推しもオタクも人間」であることを前提に、応援のカルチャーを考え続けます。
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